Newsletter 2019/06 vol.22

ビジネスピッチイベント

ビジネスピッチイベントに参加して
5月下旬に開催されたベンチャーキャピタル(VC)主催のピッチイベントに参加しました。ピッチの時間は5分。そのために自分たちが考えているビジネスプランを資料にまとめることにかなりの時間を費やして、準備しました。正直、5分で自分たちの実現したいことを、はじめての人たちに理解してもらうことは本当に難しいことを実感。
ただピッチのために資料を作成する過程は、非常に有益な時間でした。アカデミアとの共同研究を開始し、基準値を策定するためにデータを蓄積するということは決まっているので、その過程で何をするのか(タスク)はクリアです。必要な費用も試算できているので、何にお金が必要かも明確です。
それを説明する前、にそもそも「なんのためにするのか?」ということを掘り下げる必要があると思い、今回はそれに相当の時間を割いて考えました。自分なりに現在の課題を整理し、どのように解決したいかをまとめたつもりですが、プレゼンではなかなかそれを発揮できず、不発でした。

課題を共有する難しさ
私たちがビジネスの対象とする母乳や母乳育児は女性の課題であり、男性が多いVC業界の人たちにはなかなかピンと響きません。自分たちの課題感は母乳に関するメカニズムがわからないし、母乳に関する課題は自然科学だけでなく、社会科学とも関係があり、複雑で、何から手をつけなければならないかが難しいということです。そもそも母乳に関する課題を日常的に考えている男性はほとんどいないし、母乳でどんなことができるかを考えている人もほとんどいないので、短時間で問題を提起し、共有することは重要であるが、かなり難易度が高いと感じました。

自分たちのスタンス、立場を表明する重要性
私たちがビジネスの対象物は母乳であり、それは女性しか作れません。いろいろセンシティブな悩みがあるため、母乳を強調して説明すると、いろんな印象を与えてしまう難しさを経験。
私たちのスタンスは、状況に合わせて母乳と粉ミルクを臨機応変に使い分ければよい、どちらか一方だけがよいとか、何も影響を考慮せず、何かを選択するべきではないという思いで活動しています。「状況に合わせて」という状況に対する基準がないため、自分たちでアカデミアの協力を得て、策定しようとしています。それが母乳にばかりフォーカスして説明したことで、妄信的な母乳育児信者のような印象を与えてしまったようで、自分たちのスタンスを明確にして、自分たちの主張を発信する大事さを学びました

ヘルスケア、ライフサイエンス系のスタートアップにおける生みの苦しみ
私たちはスモールビジネスではなく、スタートアップでありたいと思って活動しています。だからビジネスの初期段階では収益が上がらなくても、0(ゼロ)から1(イチ)を生み出すため、1つずつ欠けているピースを見つけてはそれを埋め、ビジネスとしての可能性の解像度を高めることに全力で取り組んでいます。またヘルスケア、ライフサイエンス関連のスタートアップの場合、サイエンスとしての正しさとそのエビデンスの積み上げが要求されるため、時間軸がほかのテーマでのスタートアップとは異質です。したがって、ヘルスケアやライフサイエンスに特化し、さらに専門領域が合致した投資家でないと、私たちのビジネスモデルを評価するのが難しいと感じています。なぜならサイエンティスト(医師、助産師、製薬会社の研究者)の方々からはビジネス化しようとしている対象とアプローチについて非常に興味深く耳を傾けてもらえており、データが蓄積することでのインサイトには注目してもらっているからです。にわかヘルスケアビジネスとして、なんちゃってのエビデンスで、サービス提供はしたくないので、ビジネスとサイエンスのバランスが要求されています。これに対して私たちは、立ち上げ期から外部資本に頼るのではなく、可能な限り自分たちでサイエンスの正しさとエビデンスの積み上げを自分たちで行い、ビジネスとしての解像度を高めつつ、第三者にビジネスの潜在的価値を評価してもらえるように示していこうと考えています。

次なるタイミング
自分たちの企業価値を第三者に査定して頂くタイミングは、今年12月と考えています。アカデミアと共同研究により、母子10組、3つの時期に分けて母乳と赤ちゃんの糞便をサンプルとして採取し、メタゲノム解析を実施し、その結果が整理できるように進めているからです。ここである程度、母子の健康状態を細菌叢との相関関係があることをつきとめ、基準に関するドラフトを示します。
また実際に「母乳ドック」を提供するときに想定しているステークホルダーである医師や助産師、保健師を巻き込んだスマホアプリを使ったママと医療従事者とを結ぶ「産前産後ケアネットワーク」という仕組みも、年内に実証試験を行う予定です。
これらの検証を行うことで、市場のニーズを確認し、検証することでビジネスポテンシャルを評価するための指標を提示できるようになると考えているからです。

私たちの活動に興味をもって見守っていただいている皆様、あと半年お待ちください。

また引き続きご協力よろしくお願いします。