Newsletter 2021/04 vol.44

今解決しようと取り組んでいる課題は、「産前産後」という時期の出産、育児における「産後うつ」というテーマです。本当にビジネスとして解決できるのか、どうすればビジネスとして解決できるのか激しく悩んでいます。だからその悩みを整理するために文章にしてみました。

1)視点を変えてみる
「産後うつ」と表現すると、病気というイメージが強くなり、病気を治す方法や診断する方法がどうかということになり、医学的なアプローチとなるため、時間も費用もかかり、非常に難易度が高くなります。
自分が解決したい課題は、病気を治すのではなく、出産育児における当事者たちのストレスを軽減し、精神的に追い込まれないようにしたいのだと整理しました。

→「育児ストレス」を軽減する仕組みを作りたい

2)当事者が事前に必要としていない
出産育児の大変さは当事者になって初めてわかるため、妊娠期やその前から大変さを訴えてもこれから出産する人たちには響きません。これまでの人生で、家庭や学校で出産育児について学ぶ機会がなく、学ぶ必要があることすら認識していないため、まず「学ぶ」きっかけから気づいた人が作る必要があります。これは当事者のニーズではなく、出産育児の大変さを経験した人たちから出てきるWantになります。当事者の強いニーズではないため、強いニーズに変えるためには、誰かが気づく「きっかけ」を提供する必要があります。

→企業に協力してもらいワークショップを開始し、「気づき」を提供する

3)課題は複合的で、ソリューションは1つではない
出産育児の大変さは当事者のライフスタイルやワークスタイル、子どもの成長や健康状態なども関係するため、一般化して多くの人を対象に話をすることが難しくあります。当事者が課題と感じていることが、複合的な要因によって起きていることが多いため、1つの解決策だけではスッキリしません。だから課題に対して、複数のソリューションを組み合わせることが必要とされ、複数のソリューションを組み合わせて、連携し、ソリューションを提供することが求められます。そのためには、自分たちが提供サービスも外部サービスと容易に連携できるように準備が必要であり、デジタル化しておくことが必須と考えます。

→「育児ストレス」をデジタルで可視化するため、Webサービスの開発に着手する

4)従来のビジネスという発想ではなく、新しいビジネスの考え方で捉える
出産育児の大変さをスッキリ、全ての人たちの課題を解決しますということは無理です。
また、当事者が課題を認識しておらず、市場を創るために啓蒙、啓発が必要な状況では、スタートアップ企業が少し動いただけではほとんど影響を与えることができません。また、同じような課題を解決しようと挑戦しているスタートアップ企業があり、彼らが自分たちのソリューションを単発で提供しても、全ての課題を解決できないので、同じ思いを持つ「同志」として行動し、より大きな動きを創る活動が必要となります。
これは従来のビジネスやスタートアップ企業で言われる市場における独占的地位や競争戦略とは異なる発想で、既存の価値観ではなぜビジネスとして取り組むのかという問いに応えることができません。ただ人の課題であり、人が困ることだから、やるしかないと思うので、既存のビジネスの発想や価値観ではないアプローチで挑む必要があります。

→「人が困っているのだから、気づいた人が助けるしかない」と決意を再度する

5)「新産業を創造する」という考え方
人間中心の社会「Society5.0」を実現するために、既存社会から何をアップデートしなければならないかを考えているSUNDRED社の活動に、「インタープレナー」として少し関わるようになって、考え方が変化しました。これまではスタートアップとして、限られたリソースで事業を立ち上げるために、事業の対象を絞り込み、一点突破できる方法を基本に考えてきました。再度社会に目を向けたとき、現代の課題は複合的な課題が多く、複数の課題を同時に解決する仕組みが求められていることを感じます。だから自分たちが事業として遂行するところは絞り込んでいても、解決する課題は複数の課題を横断的に考えていく必要があります。つまり、事業はターゲットを絞り、考える課題は横断的に行うと言う2軸の視点が必要です。

→ライフステージで課題を考えるために「プレコンセプションケア」も考える

6)課題解決のため専門家の枠を超える
最近、産前産後の課題をビジネスで解決しようと事業をスタートしています。その多くは、医師や助産師などの医療従事者が発起人となって活動されていて、非常に良い流れと思います。産前産後の課題は医療だけの問題ではなく、ライフスタイルやワークスタイルの問題であり、複合的な社会の課題ですので、ぜひ医療従事者に議論を閉じずに、医療以外の専門家や生活者の人たちも巻き込んで、課題解決に共感を持って活動している「仲間」として動いていきたいと思います。

→医療従事者などの専門家と企業や課題当事者と繋ぐ役割「インタープレナー」になる

7)社会課題はノウハウだけでなく、「仕組み」で解決する
これまで現状をより多くの人たちに理解して欲しくて文章にしてきましたが、本当に届いて欲しい人たちへは文章では届かないのではないかと感じています。また専門家が持つ職能をそのまま顧客へ持ち込んでも、ビジネスにはなりません。なぜなら医療であれば保険が適用され、行政が提供するサービスであれば、非常に安価にサービスを受けることができるからです。しかし、医療サービスでも行政サービスでもカバーできていない課題があるから、既存のサービスでは解決できずに、出産育児を大変と感じる人が多くいます。
また、今の医療サービスも行政サービスも直接的に手を差し伸べる範囲で提供されるものが多く、人に依存するノウハウを提供するサービスが中心です。この領域にビジネスとして解決するチャンスがあるとするならば、範囲を限定し、人に依存するノウハウから、サービスを提供する範囲に制限がなく、人のノウハウだけに依存しないで対応できる「仕組み」を創造するところにあると考えます。そのためにも、課題を「仕組み」でアップデートする必要があります。

→まさに、始動で学んだ「WAO!」です。只今、思案中。

今悩んでいることを整理しながら、クリアになっていること、まだクリアになっていないところがありますが、気づいた人が課題解決に向けて行動するしかないと言う思いは変わらないので、また今月も活動していきます。