Newsletter 2018/08 vol.12

ライフサイエンス✖️IT

今回はライフサイエンスの分野でデジタル化の流れがどんな状況で情報通信分野から見たときにどんな課題があるのかを考えるため、がんに関する生体サンプルを研究している学会のシンポジウムに参加した時のことを報告します。
母乳の健康度を評価するときも、同じく生体サンプルをデジタル化するプロセスを行うので、共通する部分も多々あるかと考えているので、参加しました。
■がん研究における生体サンプルの活用について
第4回クリ二カルバイオバンク学会シンポジウムに参加してきました。大学や医療機関で、がんに関する研究を進めるため、細胞(生体)サンプルを収集し、研究用途で保管する取組みを行っており、その成果や課題などを報告する学会活動です。
この学会は医学系ということもあり、医師または製薬会社の方が中心ですが、検査機器、情報関連などからも参加しており、150-200名くらいが参加していました。今回は、7/6~7/8の日程で、京都大学がその会場で、まさに西日本が記録的な大雨となったときです。

■デジタルトランスフォーメーションの流れ
細胞を顕微鏡でモノをみる時代(アナログ)から、細胞をデジタル化しデータで見る時代(デジタル)へ変わってきていますが、臨床の現場ではサンプルに関して、「データ」よりも「モノ(マテリアル」に意識があり、その活用方法を考えるという意識がまだまだ議論されていない印象を持ちました。

■本格的にデータを活用する時の課題
がん研究においてこの生体サンプルを調べることは非常に重要であり、その調べた結果を蓄積することは大事だと思います。がんの場合、遺伝子の変異によっておこる疾患であることはわかっており、その遺伝子の変異を調べることで治療方法がわかる時代になってきています。これは次世代シーケンサー(NGS)という機器が開発され、遺伝子の状態をデジタルで表現できるようになった功績は大きいと思います。

1)データ量
ヒト一人の全遺伝子情報(いわゆるゲノム)をデータ化すると、およそ90GBのデータ量となります。そして、経年での変化を追跡することで、人の状態の変化を知ろうとすると、さらに膨大となります。それら膨大なデータを人が解析することは難しく、大量のサンプル、大量のデータを使って、AI(人工知能)も含めたテクノロジーを活用することで、研究が進むことが期待されます。

2)個人情報
病気になった人のことを調べるためには、ゲノムの情報は設計図であるため、その人がどんな生活、過去にどんな病気に罹ったのかなど、付加情報がより重要となります。それは個人情報となり、どのように扱うのかは法律と密接に関係しているので、時間軸を考えながら対応することが求められます。
3)比較
今回の学会でも、医学の世界では病気になった人のことを調べることに注力しますが、その人と健康な人との違いを知ることも大事で、その差が何かを知ることにより、病気のメカニズムを理解することができます。
特に、ゲノムに関しては健康な人のゲノム情報が研究の現場になく、比較するということができておらず、またいくつかのタイプに層別化もできてないため、どんなタイプの人のことを対象に議論しているのかもわかりにくいのが現実で、これも大きな課題です。

4)忍耐
医療の世界は研究してから治験を経て、臨床へという流れを取るため、成果が社会に還元されるまで時間がかかるので、根気よく継続して進めることも重要なことで、それをビジネスにしようとすると、その期間をじっくり着実に物事を進める忍耐も必要です。
5)そもそも難しい、わからない
学会でもテーマになりましたが、ゲノムだ遺伝子だと言っても一般の人は分からないため、専門家が一般人に向けてその効果や効用を説明しても理解されないし、受け入れられたいのが現実です。だから誰でもわかるように平易に説明できるレベルに変換することが、一般に向けて普及するときには重要です。

■ヒトの状態をデジタル化することでの可能性
ゲノムを解析する以外にシーケンサーでは体の状態に影響がある細菌を調べることができ、その細菌の種類や比率でその人の状態を評価できるようになってきています。最近、少しずつ普及してきた腸内細菌(腸内フローラ)を検査して、健康状態を把握し、食品やサプリメントをレコメンドするサービスがあります。
これは腸内の細菌をみるので、便を検査することになります。

こそらぼでは母子ともに健康ということを調べるため、母親の母乳と赤ちゃんのうんちを使って細菌を調べるということを事業化しようと準備を進めています。
年内にテクニカルな検証を行い、その後サービス検証を行って、来年の春ぐらいにサービスローンチできることを目指しています。

乞うご期待!