2018/05/01
今回は、昭和大学小児科の水野克己先生が主宰する「日本母乳バンク協会」について紹介します。日本母乳バンク協会では、母乳がたくさん出るお母さんから母乳を提供してもい、その「善意のドナーミルク」を低温殺菌した上で、母乳を必要とする赤ちゃんに提供するという仕組みを運営しています。
このような活動の背景には、極低出生体重児は母乳と粉ミルクとを比較したとき、母乳の方が壊死性腸炎(腸の一部が壊死してしまう病気)にかかりにくいという事実があるので、母乳を選択する必要があります。また、何らかの理由で母乳が出ないお母さんや母乳が出ても赤ちゃんに母乳をあげることができないお母さんがいるため、何らかの支援が必要となるからです。 また、世界に目を向けるとWHOやユニセフでは、母乳は赤ちゃんにとって「完全食品」と位置づけ、母乳での育児を推進しています。これは途上国ではどこでも清潔な水を確保できるわけではないため、衛生面を考慮したとき、粉ミルクを使えないという理由もあるようですが、母乳がもつ効用を評価しての方針であると思われます。
母乳バンクという活動は、1909年にウィーンで、世界で初めて組織として立ち上がり、現在では50カ国以上600組織が存在し、活動しているそうです。一方、日本では、2014年7月に日本母乳バンク協会が設立されたのが初めてで、これから順次全国へ展開する予定となっています。現在は東京(豊洲)だけでの活動ですが、数年以内に地域の周産期医療センターが中心となり、母乳バンクの機能を担い、年間3000名くらいの赤ちゃんに母乳バンクを介して母乳を提供することができるような体制を作ることを目指しているそうです。さらに10年後には、全国の大規模な小児科病院まで裾野をを広げ、年間5000名くらいの赤ちゃんに母乳バンクを介して母乳を提供できる仕組みにしていきたいとのことで、これからの発展が楽しみです。
余談ですが、8月1日は「世界母乳の日」とされており、8月第1週は「世界母乳週間」とされているので、いろいろなイベントが世界中で開催されているそうです。
なかなか普段パパ目線で母乳について考える機会はありませんが、ライフサイエンスという観点から捉えてみると、分からないことがたくさんあり、いろいろ興味が調べてみたくなる分野です。しかし、本屋で母乳をテーマに書籍を探しても、専門書が見つかりません。そこからもまだまだ未知なことが多いテーマなのだろうなぁと思ってしまいました。
第1回母乳バンクカンファレンス
母乳バンクの安全性を理解し、母乳バンクを活用して早産児の予後を改善しよう
日時:2018年6月15日(金)10:30-17:00
場所:昭和大学 江東豊洲病院
東京都 江東区豊洲5-1-38
参加費:10,000円
申込: http://jhmba-1cf.peatix.com/
今回のカンファレンスでは、早産児に対する母乳栄養の重要性と母乳バンクにおける取り組みを広く知っていただくことを目的としています。また、新生児期の栄養が将来にわたり影響を与えることをテーマに早産児から乳児まで幅広く研究されているAlan Lucas教授にも講演を頂く予定とのことです。
ぜひお時間都合がつくようであれば、ご参加下さい。